長期優良住宅を建てるメリットとは?デメリットや認定を受ける流れを解説

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長期優良住宅を建てるメリットとは?デメリットや認定を受ける流れを解説

快適で省エネ性に優れた新築住宅を建てたいと考えた際、長期優良住宅にすることが有力な選択肢です。認定を受けることで、さまざまなメリットを享受できます。しかしながら、長期優良住宅とはどのような住宅を指し、具体的にどのようなメリットがあるのか、知らない方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、長期優良住宅の特徴や、建てることのメリット・デメリットについて解説します。認定手続きの流れや、建てる際のポイントについても詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 国が定める基準を満たした長期優良住宅とは?

「長期優良住宅」とは、2009年から施行されている「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、定められた基準を満たした優れた住宅のことを指します。認定を受けるためには、以下9つの項目をクリアしなければいけません。

  • 劣化対策
  • 耐震性
  • 維持管理・更新の容易性
  • 省エネルギー性
  • 居住環境
  • 住戸面積
  • 維持保全計画
  • 可変性
  • バリアフリー性

また、長期優良住宅は、数世代にわたって長期的に住み続けることを前提に設計・施工されており、以下の特徴を持ちます。

  • 耐震性に優れ、災害に強い
  • 省エネ性能に優れ、環境に優しく快適に暮らせる
  • 次世代に継承できるため、世帯ごとに家を建てる必要がなく、経済的な余裕が生まれやすい
  • バリアフリー性があり、子育てや介護がしやすい居住環境

長期優良住宅は、古い家を建て直すというスクラップ&ビルドの抑制にもつながります。そのため、近年注目されているSDGsの考え方にも適した住宅と言えます。

新築で長期優良住宅認定を受けるメリット6つ

ここからは、新築で長期優良住宅を建てた場合に得られるメリットを紹介します。

1.長期にわたって快適性が保たれた住まいにできる

長期優良住宅の大きな特徴のひとつは、省エネ性能の高い住宅であることです。断熱性能や気密性が高く、外気の影響を受けにくいため、冷暖房効率を妨げずに快適に過ごせます。これにより、電気代の節約にもつながるでしょう。

また、部屋ごとに温度差が生じにくいため、ヒートショックの防止にもなります。さらに、結露が発生しにくく、カビや雑菌の発生を軽減することも可能です。

それだけでなく、長期優良住宅となるには、10年ごとに定期点検を実施しなければいけません。そのため、長期にわたって優れた機能性を維持することができ、新築から長い年月が経過しても、快適性が保たれた家に住み続けられます。

2.資産価値が高い住まいにできる

長期優良住宅は、省エネ性能や耐久性が高く、またメンテナンスの記録がしっかりと残されるため、資産価値が落ちにくいという特徴があります。一般住宅は、築30~40年前後で建て替えが必要なことが多いですが、長期優良住宅では保全計画のもと、長期的なメンテナンスを行うため、それ以上の年数でも良好な状態をキープすることが可能です。

そのため、資産価値が低下しにくく、売却の際も高く売れやすい傾向があります。また、メンテナンス記録から建物の状態が把握しやすいため、買主に安心感を与え、売却にもつながりやすいでしょう。

3.さまざまな減税制度や税制優遇を受けられる

長期優良住宅に認定されると、さまざまな減税制度や税制優遇が適用され、金銭的なメリットを享受できます。以下に、適用される制度を紹介します。

※2023年4月時点の情報です。

住宅ローン控除の控除額の上限拡大

住宅ローン控除とは、住宅建築のために借りた住宅ローン残高の0.7%が、最長13年間にわたって所得税から控除される制度です。2023年に新築住宅に入居する場合の控除額は以下のとおりになります。

  最大控除期間 借入限度額 年間の最大控除額 最大控除額
一般住宅 13 3,000万円 21万円 273万円
長期優良住宅 5,000万円 35万円 455万円

一般住宅の場合、控除の対象となる借入限度額は3,000万円で、年間の最大控除額は21万円です。しかし、長期優良住宅では、限度額が5,000万円に増え、年間の最大控除額は35万円になります。

そのため、年間の控除額には14万円の差があり、長期優良住宅のほうが節税メリットは大きいです。

不動産所得税の控除額の拡大

不動産取得税の控除額も、長期優良住宅では拡大されます。一般住宅の場合は、控除額が1,200万円です。また、適用期間は2024年3月31日までとなります。一方で2024年3月31日までに長期優良住宅を建てた場合は、100万円増えて1,300万円になります。※2023年5月時点の情報です。

たとえば、固定資産税評価額が3,000万円の場合、それぞれの不動産取得税を比較してみると、それぞれの違いは以下のとおりです。

一般住宅:(3,000万円−1,200万円)×3%=540,000円

長期優良住宅:(3,000万円−1,300万円)×3%=510,000円

※不動産取得税の計算式「(固定資産税評価額−控除額)×税率3%」

結果からわかるとおり、長期優良住宅で3万円も安くなります。金額に大差はありませんが、節税を考える方には少しでもメリットがあるかもしれません。

不動産免許税の税率の引き下げ

住宅の建築や購入時には、所有権登記に伴う登録免許税がかかります。しかし、長期優良住宅ではその税率が引き下げられています。

一般住宅の場合、保存登記の税率は0.15%、一戸建ての移転登記が0.3%です。対して、長期優良住宅は保存登記が0.1%、移転登記が0.2%となります。

たとえば、住宅の課税標準額が4,500万円の場合、保存登記にかかる登録免許税を比較してみましょう。登録免許税は課税標準額×税率で求められます。

一般住宅:4,500万円×0.15%=67,500円

長期優良住宅:4,500万円×0.1%=45,000円

このように、登録免許税の差は22,500円となり、長期優良住宅の方がお得であることがわかります。

固定資産税の減税期間の延長

新築の建築や購入をすると、固定資産税が2分の1に減税される期間が設けられます。長期優良住宅は、この減税期間が少し長くなるため、固定資産税の負担を軽減することが可能です。

通常、戸建て住宅の減税期間は3年、マンションは5年ですが、長期優良住宅の場合は戸建て住宅が5年、マンションが7年に延長されます。固定資産税は毎年支払うもののため、減税期間が延長されることは大きなメリットとなるでしょう。

贈与税の非課税枠の拡大

親からの住宅建築費用援助は、一定額以下であれば贈与税が非課税となります。そして、長期優良住宅を含む省エネ住宅については、非課税枠が拡大されます。

一般住宅の場合、1,000万円までの援助であれば贈与税は非課税です。一方、省エネ住宅では、1,500万円までが非課税とされます。

4.住宅ローンの借入金利が優遇される

フラット35は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している住宅ローンです。このフラット35でローンを組み、長期優良住宅を建築する場合、金利が優遇される特典があります。優遇される理由は、長期優良住宅だと、フラット35Sというプランで住宅ローンを組めるためです。

フラット35Sは、借り入れの当初から5年間または10年間、金利が0.25%引き下げられます。つまり、住宅ローンの返済負担が軽減されるというわけです。

5.建築費用の負担を軽減できる補助金を受けられる

長期優良住宅に認定されている場合、建築費用を軽減することができる補助金が利用できます。以下の2つが利用できる補助金です。

※2023年4月時点の情報となります。

こどもエコすまい支援事業

こどもエコすまい支援事業は、18歳未満の子どもを持つ世帯や、39歳以下の若年世帯を対象にした補助金制度です。自分たちが住むために、特定の条件を満たして注文住宅を建てたり、新築分譲住宅を建築したりした場合、補助金を利用できます。長期優良住宅を建てた場合だと、補助金の上限は100万円/戸です。

2023年から本格的に実施されるこの制度は、子育て世帯や若年世帯にとって、住宅取得の負担を軽減するための取り組みとなるでしょう。

地域型グリーン化事業

地域型グリーン化事業は、国土交通省が認定した事業者グループを通じて、長期優良住宅やZEHなどの建築に補助金が利用できる制度です。

木材事業者、流通事業者、建築事務所、中小工務店などが採択されたグループに属している場合、補助金を受け取れます。補助金の額は、2022年度の最大で140万円/戸でした。ただし、地域材利用や三世代同居、若者・子育て世帯などの要件を満たす場合、20万円または30万円が追加されます。

直接補助金を受け取るわけではありませんが、グループを介して間接的に補助を受け、建築費用の負担を軽減できるというメリットがあります。

6.地震保険料が割引される

長期優良住宅では、地震保険料が割引されます。割引の理由は、地震保険料が耐震等級で決められているためです。

長期優良住宅の認定基準には、耐震等級2以上を満たすことが必要です。そのため、地震保険料の割引が受けられます。割引率は以下のとおりです。

  • 耐震等級1:10%
  • 耐震等級2:30%
  • 耐震等級3:50%
  • 免震建築物:50%

耐震等級を証明する書類を保険会社に提出することで、地震保険料の割引を受けられます。

長期優良住宅にするデメリット

長期優良住宅にはデメリットもあるため、その点も確認しておく必要があります。ここからは、考えられる主なメリットを紹介します。

建築コストが高くなりやすい 

長期優良住宅は、一般住宅に比べて建築費用が高くなるというデメリットがあります。高い耐震性や省エネ性能を満たす必要があるため、建築構造や材質、設備などは性能を重視した選択が必要です。

高機能で高品質な設備を導入する必要があるため、その分、建築費用が高くなってしまうことがあるでしょう。予算オーバーを避けるためには、認定基準や優先順位を考慮した上で、コスト削減できる部分を探す必要があります。

長期優良住宅認定の申請費用がかかる

長期優良住宅の認定申請には、費用がかかります。建築確認申請を行う所管行政庁によって異なりますが、おおよそ5~6万円程度かかることが一般的です。

申請書類は、基本的には住宅メーカーや工務店が代行してくれますが、手数料が発生し、合計で20~30万円程度かかる場合もあるでしょう。業者ごとに手数料が異なるため、複数の業者に相談し、比較することをおすすめします。

着工までに時間がかかる可能性がある

長期優良住宅は、着工までに時間がかかりやすいというデメリットもあります。一般住宅に比べ、1週間から1か月以上の時間が必要になることがあるでしょう。着工は、所管の行政庁から認定を受けた後に始まります。申請から審査までに時間がかかるため、着工時期が遅れてしまい、その分、建築期間が長引いてしまうのです。

審査時間を短縮することはできませんが、書類作成から申請をスムーズに進めることで、着工までの期間を少しでも短くできます。

建築後は定期的な点検・メンテナンスが必要

長期優良住宅は、性能を維持するために定期的な点検やメンテナンスが必要です。そのため、手間やランニングコストがかかるというデメリットもあります。

点検・メンテナンスを怠ると、認定が取り消される可能性もあるため、注意が必要です。認定がなくなると、住宅ローン減税も一般住宅の税率になるため、必ず点検は行うようにしましょう。

長期優良住宅の認定を受ける流れ

長期優良住宅を建てる場合、認定申請が着工前に必要となります。ここからは、申請手続きの流れを紹介します。

長期優良住宅の認定条件を満たした設計にする

長期優良住宅に認定されるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 劣化対策
  • 耐震性
  • 可変性(共同住宅等の場合)
  • 維持管理や更新の容易性
  • バリアフリー性(共同住宅等の場合)
  • 省エネルギー性
  • 住戸面積
  • 住居環境への配慮
  • 維持保全計画

参考:国土交通省「長期優良住宅認定制度の概要について」

各項目には、詳細な評価基準が設けられています。ただし、実際のプラン作成や施工は住宅メーカーや工務店が担当するため、すべて理解しなくても大丈夫です。

登録住宅性能評価機関に技術審査(性能評価)を依頼する

認定申請を出す前に、登録住宅性能評価機関に技術審査を依頼する必要があります。登録住宅性能評価機関は、長期優良住宅の普及を目的に所管行政庁を支援する機関です。住宅の性能評価を、設計内容説明書や各種図面・計算書から行い、条件を満たしていることが証明されれば、機関から適合証が発行されます。

所管行政庁に認定申請をする

適合証が発行されたら、所管行政庁に認定の申請をします。必要な書類は以下のとおりです。

  • 認定申請書
  • 設計内容説明書
  • 各種図面・計算書

など。

所管行政庁からは、その他の書類の提出を求められることがありますので、申請前に確認しておきましょう。申請後、適合審査に合格すると認定通知書が発行されます。

長期優良住宅の認定は後で取り消しできる?

長期優良住宅の認定を取り消したい場合、どのようにすればよいのか気になる方もいるかもしれません。認定を取り消す方法や注意点について、以下で紹介します。

取りやめ届の提出で認定の取り消しは可能

長期優良住宅の認定を後から取り消したい場合、所管行政庁に取り消し届を提出する必要があります。取り消し届の書式や手続きについては、市町村区や都道府県庁のホームページに掲載されている場合がありますので、そちらを参考に書類を作成しましょう。

もし情報が見つからない場合は、直接問い合わせて手続きの方法を確認してください。自治体によっては、認定通知書の提出を求められる場合もあるため、必要かどうか確認しておくことが大切です。

補助金の返金や固定資産税が高くなるデメリットがある

所管行政庁に取り消し届を提出すれば、長期優良住宅の認定を取り消せます。ただし、認定を取り消すと一般住宅として扱われ、これまで受けていた待遇も失われることは認識しておかなければいけません。たとえば、国からの補助金は返金を求められる場合もあるでしょう。

また、固定資産税の減税期間も、5年から3年に短縮されます。もしすでに3年以上経過している場合は、元の税率での支払いが必要となってしまうのです。

長期優良住宅は、維持保全に負担がかかることがデメリットですが、定期点検や補修・修繕を行うことで住宅の快適性を維持できます。また、メンテナンスをしっかり行うことで、資産価値も保たれるでしょう。将来的に売却する際に高く売れる可能性もあります。

取り消しを検討する場合は、よく考えてから手続きを進めるようにしましょう。

長期優良住宅を建てる際のポイント

長期優良住宅の建築には高い費用がかかりやすいため、失敗しないように慎重に検討することが重要です。そこで、建築に際してのポイントを以下で紹介します。

長期優良住宅のメリットとデメリットを比較する

長期優良住宅を選ぶ際は、メリットだけでなくデメリットもしっかりと比較し、慎重に検討することが大切です。とくに節税メリットと建築費用については、別々に考える必要があります。

というのも、節税措置や割引を受けられる反面、建築費用は高額になりがちです。節税効果が建築費用に見合わない場合は、長期優良住宅で建てることがデメリットになることもあります。建築費用と節税効果をバランスが重要となるため、しっかりと見極め、削れる部分を見つけてコストダウンに努めましょう。

長期優良住宅の建築実績が多い住宅メーカーや専門家に相談する

長期優良住宅を建てる際は、経験豊富な住宅メーカーや建築会社、専門家に相談することが大切です。彼らは長期優良住宅に関する知識や実績が豊富なため、施主の要望や予算を考慮した住宅の設計や施工を行ってくれるでしょう。

また、優遇措置や建築にかかる費用を比較したい場合は、ファイナンシャルプランナーなど、お金に詳しい専門家に相談してアドバイスを受けることもおすすめです。ただし、専門家に相談する場合は、相談料がかかる場合があることに留意しましょう。

家づくりのシミュレーションに便利な「LIVRA WORLD」

長期優良住宅を含む家づくりの失敗を防ぐためには、実際の暮らしをイメージしながら設計していくことが大切です。しかし、具体的に住まいをイメージするのは簡単なことではありません。

そこで、バーチャル住宅展示場の「LIVRA WORLD」を活用してみてください。「LIVRA WORLD」では、オンライン上で気軽にモデルハウスを見学できるので、家づくりのアイデアの参考になるだけでなく、優良なハウスメーカーや建築家を見つけられます。

また、モデルハウスのカスタマイズも可能です。カスタマイズ機能を活用して、家族全員で理想の住まいのイメージを共有できるでしょう。価格シミュレーションにより予算の把握もできるので、安心して家づくりに取り組めます。

まとめ:節税メリットや省エネ性・快適性に優れた長期優良住宅を検討しよう

長期優良住宅には節税メリットや省エネ性能、快適性などのメリットがありますが、建築費用が高くなる傾向があるため、住宅メーカーの施工経験や知識を活用して慎重に検討する必要があります。

また、自分たちが理想とする家のイメージを明確にすることも重要です。こうした場合に便利なのが「LIVRA WORLD」。オンラインでモデルハウスを見学したり、カスタマイズしたりして、理想の住まいづくりに役立ててみてください。

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