木造建築の基礎知識|工法や構造の種類や特徴とメリット・デメリット

家づくり
木造建築の基礎知識|工法や構造の種類や特徴とメリット・デメリット

日本の住宅は昔から木造建築が取り入れられています。現代でも鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅はあるものの、一般的なのはやはり木造建築です。

日本人にとって身近な木造建築ですが、実際に使われている工法・構造にはさまざまな種類があり、特徴も異なります。そこで今回は、木造建築とはどういったものなのかという基本的な知識からメリット・デメリットについて解説していきます。

木造建築とは?

木造建築は、建物の主要な部分(骨組みや柱など)に木材を使用した建築物を指します。

日本国内では住宅を含め、さまざまな物件に木材を使用してきました。まずは、そんな木造建築の特徴から解説していきましょう。

木造建築を構成する主な構造と名称

木造建築の建物は、主に以下の構造から構成されています。

  • 母屋(もや)
  • 垂木(たるき)
  • 棟木(むなぎ)
  • 筋交い
  • 根太(ねだ)
  • 土台

母屋は屋根の重さを支えるための角材で、垂木や棟木とともに屋根を支えています。梁は棟木に直行し、桁は棟木に並行する形で組まれるのが特徴です。また、柱を組み上げていく際、補強を目的として柱と柱の間に入るのが筋交いになります。

根太は、床の重さを下の大引きに伝える役割を担っている部分ですが、最近では厚みのある床合板を使用することで根太を使用しないケースも増えてきました。土台は基礎部分と骨組みをつなぐ重要な部分であり、防腐・防蟻処理を施した木材が使用されています。

木造建築は日本の戸建て住宅のポピュラーな工法

木造建築は日本国内において一般的な工法です。「平成30年住宅・土地統計調査」で住宅の建て方・構造別割合をみると、戸建て住宅の木造(防火木造も含む)の割合は92.5%と、9割以上が木造住宅であることがわかっています。

日本の戸建て住宅は、なぜ現在も木造建築が一般的なのでしょうか?その理由は、日本の気候が大きく影響しています。

鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)は耐震性や気密性に優れているものの、湿気が溜まりやすいことから換気設備を取り入れなくてはなりません。一方、木造建築に使用される木材は通気性・吸湿性に優れているため、雨が降っても過ごしやすい空間を維持できます。

また、神社やお寺などを建築する際に木材を使用していたことから、歴史的に木造建築の技術を持っていたことも日本で木造建築が広まった大きな要因といえるでしょう。

木造建築と他の構造の違いは?

日本の戸建て住宅は木造建築が一般的ですが、アパートやマンションといった共同住宅は鉄骨造・RC造が主流です。

木造建築と鉄骨造・RC造は比較するとどのような違いがみられるのでしょうか?詳しく確認しておきましょう。

鉄骨造(S造)との違い

鉄骨造とは、住宅を支える梁や柱などに鉄骨を用いた構造です。主に戸建て住宅に採用されることもありますが、一般的にはアパートやマンション、ビル、工場、倉庫などで用いられます。

鉄骨造は大きく軽量鉄骨造と重量鉄骨造の2種類に分けられます。これまでは戸建て住宅だと軽量鉄骨造、高層マンションやビルに重量鉄骨造が採用されていましたが、現在は重量鉄骨造を戸建て住宅に採用するケースも増えてきました。

鉄骨は木材に比べて熱が伝わりやすいことから、断熱対策が必須です。また、木材と鉄骨では重量にも違いがあり、建物の重さによっては地盤改良が必要になるかもしれません。

ただし、鉄骨造は木造よりも強度が高く、耐震性に優れています。木造よりも柱を少なくできるので、より広い空間をつくりやすいのは大きなメリットです。

鉄筋コンクリート造(RC造)との違い

鉄筋コンクリート造とは、建物の主要な部分を鉄筋とコンクリートで構成している構造です。引っ張る力に強い鉄筋と、圧縮に強く重さに耐えられるコンクリートが組み合わさることで、耐久性と気密性の高さを生み出しています。

鉄筋コンクリート造にはラーメン構造と壁(パネル)式構造の2種類があります。ラーメン構造は主に柱と梁によって強度を高めており、空間設計の自由がききやすいのがメリットです。一方、壁式構造は壁・床・天井のパネルで建物を支える構造であり、柱や梁が少ないため空間をスッキリさせられます。

鉄筋コンクリート造は他の構造よりも法定耐用年数が高いことも特徴的です。木造住宅は22年ですが、鉄筋コンクリート造住宅は47年と木造の倍以上に設定されています。メンテナンスも比較的行いやすいことから、長く住み続けられる住まいを実現できるでしょう。

一方で、鉄筋コンクリート造は木造に比べて建築費用が高くなりやすいといったデメリットもあります。資材の値段だけでなく、工期がかかってしまうことも費用が高くなってしまう要因のひとつです。

木造建築で使われる工法の種類と特徴

木造建築では5種類の工法が用いられています。それぞれどのような特徴があるのか解説していきましょう。

木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法)

木造枠組壁工法とは、厚さ2インチ・幅4インチの木材と合板を使って枠組をつくり、六面体構造にしながら壁や床を取り付けていく工法です。面で構成されていることから、万が一地震が発生してもうまく力が分散されるため、耐震性の高さにつながっています。

また、気密性が確保しやすい点やファイヤーストップ構造による耐火性の高さなども特徴的です。現在は資材の規格化や設計・施工のマニュアル化が行われており、施工会社による品質の差は生じにくくなっています。

木造軸組工法(在来工法)

木造軸組工法とは、柱と梁をもとに骨組みをつくり、壁や床を取り付けていく工法です。面で支える木造枠組壁工法とは異なり、こちらは軸で支えます。ここに筋交いや耐力壁を使用することで水平方向にかかる力に対しても補強することにより、耐震性・耐久性の向上を図っているのです。

日本では昔から取り入れられている木造建築の工法であるため、幅広い施工会社の中から建築を依頼する会社を選べます。また、在来工法で建てた家は後からリノベーションが行いやすい点や、間取りの自由度が高い点なども木造軸組工法の魅力です。

木造ラーメン工法

木造ラーメン工法は、鉄骨造で活用されていた「ラーメン工法」という技術を応用し、木造建築に取り入れた工法です。木材の柱や梁にボルトを組み込み、固定させます。

木材ならではのしなやかさを保ちつつ、金属の強さが備わることで建物の強度も向上するのです。また、筋交いや耐力壁にとらわれない空間設計ができるのもポイントのひとつでしょう。

木造プレハブ工法

木造プレハブ工法は、工場で生産・加工された木質パネルを活用し、現場で組み立てていく工法です。パネルを活用し面で建物を支えることで、高い断熱性と気密性を誇ります。パネルの内側には石膏ボードが採用されることもあり、耐火性もある程度兼ね備えているのが特徴です。

あくまでもプレハブ住宅と同様になるため、間取りやデザインの自由度が低いものの、一般的な住宅建築に比べて工期を短期間に抑えられます。その結果、建築コストを安く抑えることも可能です。

ログハウス

ログハウスは、ログ(丸太)を積み重ねることで壁をつくっていく工法です。「丸太組工法」とも呼ばれ、丸太によって積み重なった壁は高い強度を持っており、開放的な空間がつくれます。

丸太組工法以外にも、ログハウスには柱と梁に丸太を取り入れ耐力用に筋交いを設置する「ポスト&ビーム工法」と、通常のログハウスに比べて短い木材を積み重ねる「ピース・エン・ピース工法」の2種類あるのが特徴です。なお、ログハウスは木材が多く利用されているので素材の影響を受けやすく、メンテナンスも欠かせません。

木造建築で使われる木材の種類と特徴

木造建築に使用する木材にもさまざまな種類があり、それぞれで特徴が異なります。ここでは、とくに木造建築で取り入れられている木材の種類や特徴について解説しましょう。

ヒノキ・ヒバ

日本人にも馴染み深いヒノキ・ヒバは耐久性に優れているため、昔からお寺や神社などの建築に用いられてきました。ヒノキとヒバの樹脂には「ヒノキチオール」という成分が含まれています。ヒノキチオールは特有の香りを生み出すだけでなく、高い殺菌効果やリラックス効果も期待できるのが特徴です。

さまざまな効果を兼ね備えているため、住宅に取り入れたいと考える方もいるでしょう。しかし、ヒノキ・ヒバは木材の中でも高価な部類です。構造全体に使ってしまうと予算をオーバーしてしまう恐れもあります。取り入れたい場合にはワンポイントで採用してみましょう。

スギ

スギもヒノキ・ヒバと同様に、昔から馴染みのある木材です。ヒノキ・ヒバは高価な部類であるものの、スギは成長の速さと日本中の森林に生息しているため安く購入できます。

スギは材質が柔らかいため加工がしやすく、木造住宅の構造材や建具などにも使用されているのが特徴です。また、スギは空気を多く含みやすい特性を持っており、保温性や断熱性、調湿性にも優れています。多湿で、夏は暑く冬は寒くなりやすいといった特徴もあるため、日本の住宅に適した木材です。

ウォールナット

ウォールナットとは、チークやマホガニーとともに世界三大銘木と呼ばれる木材となります。海外では古くから建材として活用されており、美しい木目が特徴的です。

ウォールナットはクルミ科クルミ属の落葉広葉樹で、密度が高く重量もあります。こうした特性から耐久性に優れており、傷がつきにくいのが魅力です。

また、木材は一般的に伐採をした後も呼吸をしているため、水分を吸収したことで歪みが発生したり、逆に乾燥して割れやすくなったりすることもあります。しかし、ウォールナットは伐採後の歪みや割れといった変形も起こりにくいのが特徴です。

ブナ

ブナは建材だけでなく、家具にも用いられている木材です。「ビーチ材」とも呼ばれており、高い強度を持つことから耐久性にも優れています。

ブナ材は元々変色や腐食に弱く、建材にはあまり適さないとされていました。しかし、現代は加工技術が発展したことで十分な乾燥・加工を行えるようになり、建材にも用いられるようになったのです。

木造建築の4つのメリット

日本の戸建て住宅で木造建築が主流になっているのは、歴史的な背景からだけでなく木造ならではのメリットも影響しています。ここでは、木造建築の4つのメリットについて解説していきましょう。

建築費用を抑えられる

国土交通省の「2022年度建築着工統計調査」にて、工事費予定額と床面積の合計から1平方メートルあたりの工事費予定額が算出できます。以下で木造・RC造・鉄骨造の3つの構造別に、居住専用住宅の1平方メートルあたり工事費予定額を算出しました。

  工事費予定額(万円) 床面積の合計(平方メートル) 1平方メートルあたり工事費予定額
木造 787,365,029 44,509,508 176,898円
RC造 345,203,608 12,466,701 276,900円
鉄骨造 242,947,017 8,963,968 271,026円

1平方メートルあたりの工事費予定額をもとに坪単価を算出した結果は、以下のとおりです。

木造…176,898円×3.3平方メートル=約58.3万円

RC造…276,900円×3.3平方メートル=約91.3万円

鉄骨造…271,026円×3.3平方メートル=約89.4万円

※1坪=約3.3平方メートル

このように、坪単価で比較すると約30万円近くも費用を抑えられていることがわかります。ただし、使用する木材や導入する設備などによっては、木造建築でも高額な費用がかかってしまうこともあるので注意してください。

耐火性能が優れている

木材=燃えてしまうというイメージから耐火性能が弱いと考える方もいるでしょう。しかし、木材の熱伝導率は鉄に比べて低く、表面が焦げても内部まで燃えるのに時間がかかります。万が一火災が発生したとしても構造体の木材は残り続けるため、倒壊するリスクは低いのです。

RC造や重量鉄骨造だと耐火性能も高くなりますが、軽量鉄骨造の場合は高温によって鉄骨が曲がってしまい、倒壊するリスクが高まります。

日本の気候風土に適している

1年を通して快適に過ごせる家づくりを目指すためには、日本の気候風土に適した建築を取り入れることが大切です。日本の気候風土は、夏になれば暑く冬になれば寒くなるため、それぞれの季節に順応する必要があります。また、梅雨の時期もあることから通気性も考慮しなければなりません。

木造建築は、日本特有の気候風土にも対応できるメリットがあります。たとえば木材は熱伝導率が低いため熱がこもりにくく、夏でも快適に過ごせるでしょう。また、壁に断熱材を取り入れることで冬の寒さも軽減できます。

さらに通気性にも優れていることから、湿気も溜まりにくく梅雨の時期も安心です。このように、木造建築は日本の気候風土に適した構造であることがわかります。

デザインの柔軟性が高い

工法によって異なるものの、木造建築は基本的にデザインの柔軟性が高いとされています。なぜなら柱や土台など建物を支える部分がしっかりしていれば、間取りなどはある程度自由に設計できるためです。

とくに木造軸組工法や木造ラーメン工法は、土地の形状や空間の広さにあわせて設計しやすいという特性があります。そのため、変形地・狭小地などに建築したい場合におすすめです。ただし、木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法)は使用するパネルのサイズがあらかじめ決まっていることから、デザインの柔軟性はそれほど高くありません。

木造建築の4つのデメリット

木造建築のメリットをご紹介しましたが、その一方でデメリットも存在します。

これから家づくりを検討する上で、木造建築のデメリットについても把握しておきましょう。

耐用年数がほかの構造と比べて短い

木造住宅の耐用年数は22年に設定されています。一方、RC造(住宅用)は47年、鉄骨造(住宅用)は鉄骨の厚さが4mm以上だと34年、3〜4mmだと27年、3mm以下だと19年です。

ただし、耐用年数が短いからといって22年を超えれば住めなくなるわけではありません。そもそも法定耐用年数とは減価償却を行う際に計算しやすいよう設けられたもので、住宅の寿命を表すものではないのです。

それでも天然素材である以上、放置していれば経年劣化の進行も早まってしまう恐れがあります。長く住み続けるためには定期的なメンテナンスが必要です。

木材の品質や職人の腕に仕上がりが左右されやすい

建材として使用する木材は加工が施されているものの、元々は天然素材であることから品質に差が生じる場合もあります。低品質の木材が使われてしまえば、建物の強度にも影響が出てしまう可能性もあるでしょう。

また、環境に合わせて対応できるよう現場で木材を加工することもあります。このとき、対応する職人の腕によっては品質の良し悪しに影響を及ぼしてしまうかもしれません。こうした木材の品質や職人の腕による影響で仕上がりが左右されてしまうのはデメリットといえます。

防音性能が低い

木材の性質として、防音性が低い点もデメリットにあげられます。音を通しやすいため、外の音がよく聞こえたり、逆に室内の音が外に漏れてしまったりすることもあるでしょう。

木造住宅で防音性能を高めたい場合には、壁や天井を二重構造にすることで対策が可能です。また、断熱材として用いられるグラスウール・ロックウールなどで吸音性を高めたり、二重窓や防音ガラスを採用することで音漏れを防いだりすることもできます。

害虫の被害にあいやすい

RC造や鉄骨造との大きな違いとして、木造建築は害虫の被害にあいやすい点がデメリットです。とくにシロアリは木材が主食になるため、気付いたときには建物が倒壊のリスクに陥ってしまうこともあります。

近年は土台にコンクリートを取り入れる「ベタ基礎」の住宅も増えており、また防蟻処理加工が施された木材や、防蟻薬剤を定期的に散布することによるシロアリ対策も可能です。建物の耐久性を低下させないためにも、事前に害虫対策についても検討しておきましょう。

バーチャル住宅展示場で木造住宅を見学してみよう

家族にとって理想的な木造住宅をつくるためには、建材は何を用いるか、どのような間取りにするかなど、具体的なイメージを膨らませておくことも大切です。イメージを膨らませるのにモデルハウスの見学に行くのもよいですが、時間が取れず足を運べない場合もあるでしょう。そんなときにおすすめなのが、バーチャル住宅展示場です。

バーチャル住宅展示場の「LIVRA WORLD」では、各ハウスメーカーや建築士によるモデルハウスをいつでもどこでも内覧できます。会員登録をしておくと、来店・商談予約なども行えるようになるため、理想の家づくりにぜひ活用してみてください。

まとめ:メリットやデメリットを理解して、温もりあふれる木造住宅を建てよう!

今回は木造建築の基礎知識についてご紹介してきました。木造建築は古くから日本に根付いている建築方法であり、今でも多くの戸建て住宅に採用されています。

木造にするメリットは多いものの、一方でデメリットもないわけではありません。注意しなければいけない点も把握しておくことで、理想的な木造住宅につながります。ぜひ今回ご紹介してきた情報を参考にしつつ、もし木造住宅を建てるならどのような設計にしたいかを考えてみましょう。

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