北側斜線制限とは?規制の内容や計算方法、緩和されるケースを解説

家づくり
北側斜線制限とは?規制の内容や計算方法、緩和されるケースを解説

家を建てるために土地から購入する場合、斜線制限について理解しておきましょう。斜線制限について理解がないまま土地を買って家を建てようとすると、想定していた住まいを実現できない可能性があるためです。

今回は斜線制限の一種である北側斜線制限に焦点をおき、規制内容や計算方法などの基本知識を解説します。土地選びや家づくりで失敗したくない、北側斜線について理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

「斜線制限」とは建物の高さ制限のひとつ

斜線制限とは、都市計画区域で建物を建築する際に適用される高さ制限です。周辺環境の日当たり・風通しなどを妨げないために、建築基準法によって定められたルールとなります。北側傾斜制限のほかにも、隣地斜線制限と道路傾斜制限の2種類があるので、どのような規制なのか見ていきましょう。

隣地斜線制限とは

隣地斜線制限は、建物の高さと傾斜に関する制限です。隣接する建物の採光や通風を妨げないために、20mもしくは31m以上になる箇所は一定範囲の角度で傾斜をつけた範囲内だけ建築できることを意味します。

主な対象は、マンションやビルなどの高層になりやすい建物です。そのため、2階建てや3階建ての戸建て住宅は対象から外れます。

さらに、低層住宅や戸建て住宅など建てられる建物が限定される、低層住居専用地域(第一種・第二種)も対象外です。10mまたは12mの絶対高さ制限と呼ばれる上限が設けられています。

道路斜線制限とは

道路傾斜制限は、道路の採光や通風の確保を目的に、道路側にある建物の高さに関する制限です。20~35mの範囲で建物と接する道路の幅員幅にもとづき高さが決まります

具体的には道路向かい側から一定の角度で斜線を引いて、それを超えないように建築しなければなりません。斜線の角度は用途地域の種類に応じて異なり、住宅系では1mあたり1.25m、工業・商業系では1mあたり1.5mずつ斜線が上がっていきます。

なお、道路斜線制限はどの用途地域でも適用されるものですが、道路の幅員幅によって規制も変わってくるので注意してください。なお、道路斜線制限は天空率(ある位置から見た建物と空の面積の比率)の利用や、建物の後退によって制限を緩和させることも可能です。

「北側斜線制限」は北側の隣地に面した建物部分にかかる高さ制限

太陽は南から差し込むため、住宅を建てる際は北側に隣接する建物の日当たりを考慮しなければなりません。そこで重要となってくるのが北側斜線制限です。

高さを考えずに家を建ててしまうと北側の建物は採光がとれなくなり、隣家にも迷惑をかけてしまいます。トラブルを避けるためにも、しっかりと理解を深めておきましょう。

北側斜線制限が適用される用途地域

北側斜線制限の対象になる地域は以下のとおりです。

  • 低層住居専用地域(第一種・第二種)
  • 田園住居地域
  • 中高層住居専用地域(第一種・第二種)

住宅が多く建つ低層住居専用地域は、低層住宅向けに良好な住環境が保たれています。つまり、住環境を保護する一環として北側斜線制限を適用しなければなりません。農業と低層住宅の調和を目指した田園住居地域、中高層マンション・学校・病院・中小規模の店舗・飲食店など一部施設を建築できる中高層住居専用地域も、同様の理由で北側斜線制限が設けられています。

北側斜線の基本の計算式と用途地域による基準の高さ(5m・10m)の違い

北側斜線制限では、建物の北側における高さが5m、または10m以上になる箇所に対して規制がかかります。5m・10m以上になる箇所は、一定角度の斜線を超えない高さで建築しなければなりません。

基準となる高さは、用途地域ごとに違ってきます。制限される建物の高さは、低層住居専用地域や田園住居地域だと5m以上、中高層住居専用地域は10m以上です。斜線の勾配はいずれも1:1.25となります。

用途地域別に算出したい場合は以下の計算式に当てはめてみましょう。

・低層住居専用地域

5m+1.25×水平距離>建物の高さ

・中高層住居専用地域

10m+1.25×水平距離>建物の高さ

計算式に用いる水平距離とは、真北方向(北緯90度地点)の隣地境界線や前面道路の反対にある境界線から建物までの水平な距離を示します。

北側斜線制限と日影規制の違い

周辺の建物の日当たりに関する規制には、日影規制というものもあります。日影規制とは、マンションのような中高層の建物を建てる際に、日影となる時間を極力抑えることを目的にかけられる建物の高さ制限です。

北側斜線制限では、北側に面する建物の日当たりを考慮して建物の高さ制限が行われます。しかし、日影規制は方向に関係なく、対象の建物により日影ができてしまう時間を抑えるために建物の高さを制限しなければならない点が大きな違いです。

適用されるのが低層住居専用地域という点は北側斜線制限と同じですが、さらに都道府県・市区町村により日影規制の条例が定められている場合に規制がかけられます。そのため、規制内容は自治体によって変わるので注意してください。土地によっては北側斜線と日影規制の両方が重なる可能性もあり、その場合は厳しいほうが適用されます。

北側斜線制限のケース別の考え方

土地によって北側斜線制限について考えながら設計していくことになりますが、具体的にどのように考えればよいのでしょうか。ここで、ケース別に北側斜線制限の考え方をご紹介します。

隣地が低い場合

北側に面する隣地と高低差が生じていることがあります。家を建てる土地よりも北側の隣地の方が低いときは、高低差のない土地と同じように北側斜線制限を計算して問題ありません。

逆に隣地のほうが1m以上高いときは、緩和地盤面を求め、それを基準に北側斜線を計算することになります。北側斜線制限の緩和にも関わるので、隣地が高いケースについては後ほど詳しく解説しましょう。

北側斜線が建物の2方向以上にかかる場合

北側斜線制限は、北緯90度の地点を示す真北方向の境界線を基準に考えていきます。方位磁石が示す北とはズレが生じるので注意してください。

斜線の起点は、北側にある隣地や道路反対側の境界線から5mもしくは10mの位置です。その起点から真北に向かって、1:1.25の勾配で引いた斜線が北側斜線になります。

しかし、土地が真北からズレていることもあるでしょう。その場合は傾斜制限が2方向以上かかることを考慮して、建物の高さと傾斜を考えていく必要があるのです。

道路斜線制限などほかの制限と重なる場合

道路斜線制限はすべての用途地域に適用されるため、北側斜線と重なる可能性もあります。北側斜線制限と他の制限が重なる際は、どちらか厳しいほうが適用されると考えてください。

道路斜線制限の場合、前面道路反対側の境界線を起点に一定の角度で斜線を引きます。道路の幅が広ければ広いほど、規制の範囲が狭まるのが特徴です。

しかし、地盤面から斜線を引く点が北側斜線とは異なる箇所であり、それにより規制が厳しくなる可能性があるでしょう。そうなれば道路斜線制限が優先されます。

土地によって、かけられる制限は異なります。建物の高さに関してどのような制限がかけられるのか、しっかり確認しておきましょう。

北側斜線制限が緩和されるのはどんなケース?

基本的に北側斜線制限は厳守しなければなりませんが、緩和されるケースも存在します。緩和されるケースは主に4つあるので、ここで詳しく解説しましょう。

敷地の北側が道路の場合

北側が道路となっている場合、その道路の反対側の境界線を起点に北側斜線を引きます。斜線の起点が遠くなることから、北側斜線制限が大きく緩和されることがあるのです。

ただし、このケースでは道路傾斜制限も同時に重なるので、上記でも述べたように厳しいほうを適用しなければなりません。一般的に道路斜線制限のほうが厳しい傾向にあります。

起点となる境界線が変われば斜線の角度も変わるので、建築可能な建物の高さの上限を上げることも可能なことを覚えておきましょう。

敷地の北側が水辺や公園・広場の場合

北側が川や池といった水辺や公園・広場に面している敷地も緩和されます。このケースでは、水辺や公園・広場の幅員2分の1の位置を隣地境界線とすることが可能です。

北側が道路と面しているケースと同じく、隣地境界線の距離が延びる分、北側斜線の高さが変わってきます。それにより、建物を高くすることが可能です。

なお、建築基準法第135条の4では「水面」と記載されていることから、水路や河川が対象となります。たとえば潰れ水路などで水路形態が現状見られない場合、緩和の対象外となってしまう場合もあるので注意してください。

参考:建築基準法施行令

隣地のほうが1m以上高い場合

北側の隣地と高低差が生じており、隣地のほうが1m以上高いケースなら緩和も可能です。隣地が高いケースでは、(高低差-1m)÷2の計算式で緩和地盤面を求めて、北側斜線を設定します。たとえば、高低差が1.5mだった場合、緩和地盤面は以下のとおりです。

(1.5m-1m)÷2=0.25m

上記の例では、0.25mの高さを自分の土地の地盤面と考えて、北側斜線を引いていきます。本来の地盤面よりも高さが上がる分、北側斜線も高くなり、建物の高さ上限もアップするのです。

天空率が基準を満たしている場合

天空率を利用することで北側斜線制限が緩和されます。天空率は、魚眼レンズで空を見上げた際に、建物が投影される部分を除いた空の面積との比率のことです。天空率が高いほど、空がよく見える状態を指します。

緩和できるかどうかは、適合建築物とこれから建てる計画建築物の天空率を比較することで判断可能です。適合建築物とは、建ぺい率や容積率などは度外視して、北側斜線制限において建築できる最大サイズの建物を示します。

適合建築物の天空率よりも計画建築物の天空率が高いと、北側斜線に関係なく高い建物の建築が可能です。北側斜線制限における天空率の測定点は、用途地域ごとに以下のように定められています。

【低層住居専用地域・田園住居地域】

  • 隣地の境界線から真北方向に向けて水平距離が4mの位置
  • 線上で、1m以内の等間隔で配置した位置

【中高層住居専用地域】

  • 隣地境界線から真北方向への水平距離が8mの位置
  • 線上で、2m以内の等間隔で配置した位置

上記の各測定点で、適合建物より計画建築物の天空率が上回っていれば緩和することも可能です。

北側斜線をクリアして理想の住宅を実現するアイデア

住宅が密集する土地では、北側斜線の制限をクリアしながら理想の住まいを考えていく必要があります。たとえば、北側の屋根は斜線に触れない角度で傾斜をつけた勾配屋根にするなどです。

勾配屋根を利用する際には天井に天窓を設けることで、上から日差しを取り込めます。屋根の高い部分にロフトを使って、ちょっとした小部屋や収納として活用するのもよいでしょう。

また、家全体の高さを下げることでも制限のクリアは可能です。しかし、家の高さが低くなると各部屋の高さが低くなり、窮屈さや住みづらさを感じる可能性もあるでしょう。そんなときは半地下室を設けることで、家全体の高さを抑えながら窮屈さを抑えられます。

ガレージつきの3階建ての家を建てたいのであれば、L字型の建物にするとよいでしょう。L字型により北側の建物部分の高さを抑えられれば、北側斜線をクリアしながら3階建ての住まいの実現が可能です。

このほかにも北側にバルコニーを設けて、フェンスに縦格子を採用する方法もあります。屋上をつくりたい場合は、北側斜線制限がかかる場所に縦格子のらせん階段を設けて、屋上に行き来できる状態にしつつ制限に対応していく方法もおすすめです。

このようにアイデアは多くありますが、なかなかイメージがまとまらないこともあるでしょう。そんなときは、自宅から気軽にモデルハウス見学ができる「LIVRA WORLD」を活用してみることをおすすめします。

バーチャル住宅展示場を利用して具体的なイメージを想像しよう

家づくりの失敗を防ぐために大切なことは、明確なイメージを持つことです。家づくりでは、北側斜線制限をクリアすること以外にも、さまざまなことを考えなければなりません。

「こういう家にしたい」「こんな暮らし方がしたい」など家の姿や暮らしのイメージを持つと、設計士に相談した際に各種制限をクリアしながら、満足のいく家を一緒に考えてもらえます。

バーチャル住宅展示場の「LIVRA WORLD」では、各ハウスメーカー・工務店のモデルハウスをオンライン上で気軽に見学することが可能です。モデルハウスの見学を通じて、自分たちがどのような家をつくりたいのかイメージを共有し、検討できるようになります。

LIVRA WORLD」では、ハウスメーカー・工務店の来店や面談の予約も可能なので、施工会社探しにも活用できるでしょう。モデルハウスのカスタマイズや予算のシミュレーションも家づくりに役立つ機能となっています。

まとめ:注文住宅を建てる際は北側斜線制限に注意しよう!

購入する土地やすでに保有している土地によっては、北側斜線制限がかかってしまいます。建築基準法でも定められているルールであるため、注文住宅を建てる際には制限をクリアできる家を設計しなければなりません。

斜線制限は専門的な知識が求められるので、やはり住宅のプロに相談することが大切です。「LIVRA WORLD」ならモデルハウスから家のイメージを膨らませながら、気になるハウスメーカー・工務店を探すのにも役立ちます。家づくりを検討している方はぜひ「LIVRA WORLD」をチェックしてみてください。

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